(その4)兵庫県警へ「不正指令電磁的記録に関する罪」の情報公開請求をしました

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最初に、ニュースを入れておきます。

既にご存じの方も多いでしょうが、CoinHive事件について、一審で無罪判決だったモロさんに対して横浜地検が判決に不服として控訴しました(コインハイブ事件で検察側が控訴 無罪判決に不服)。これにより高等裁判所で裁判が続くこととなりました。非常に、非常に残念です。

今後の裁判に影響があると多大な迷惑をかけると思いますので、具体的な問題点の指摘等は私からは控えます。ただ、やはり、本当に残念です。

これで日本のIT分野における国際競争力は、確実に遅れることでしょう。既に取り返しの付かないレベルに達しつつあります。

これまでのあらすじ

友人から、最近、以下のような意見を頂きました。

最近のお前の記事は、似たようなタイトルでよく分からん。まず、「そのn」は記事先頭に書かないと後ろが切れてキレる、前に書け。それから毎回、あらすじリンク集を付けてくれ。前の記事が追いにくい。

なるほど。持つべきものは友人です。というわけで、利便性のため今回からあらすじリンク集を付けることにしました。ORDER BY date DESC(降順ソート; 新しいものが上)です。

進捗報告

前回の情報公開請求で期限が4/10でしたが、本日に兵庫県警から封書が届きました。その気になる中身ですが……部分公開ではありますが、「公開決定通知書」が届きました。これは完全に予想外でした。

てっきりもう一度延長してくるかと思っていたので、迅速に処理してくださった兵庫県警職員の方には、お礼申し上げます。

内容について

以下に全て公開します。公開決定通知書1枚+「別紙2枚」の3枚です。

別紙1の冒頭に書かれておりますが、公開されるのは以下の文書です。

  • 生活安全警察の基本
    • サイバー犯罪対策課4頁「コンピュータ・ウイルスに関する事案認知時の対応チャート」
  • サイバー相談対応要領
    • 「Case1からCase4」
  • 不正指令電磁的記録に関する罪の取締りの推進及び取締りに当たっての留意事項について

公開決定通知書

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公開決定通知書

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別紙1

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別紙2

考察

まず今回、一部で兵庫県警独自作成の文書が公開されるようです。私は警察庁の通達には基本的に目を通していますが、そこに過去掲載されていたことが一度もない文書があります。(かつ、検索しましたが見つかりませんでした)。

ということは、「不正指令電磁的記録に関する罪」の取締りを行うにあたり、兵庫県警は他の都道府県警とは違う独自基準を持っている可能性があります。また純粋に、犯罪構成要件を兵庫県警がどう考えているのかも、大変気になります。何度も書いていますが、それを知るために私は情報公開請求をしたのです。私と私の友人が逮捕されないためです。

文書が開示されましたら、無限ループJavaScriptへのリンクを貼っただけの行為に対して家宅捜索を行ったことが法律的に妥当かどうか、キッチリと見させていただきます。

また今回、一部が非公開となりました。内容を見ないとなんとも言えませんが、現時点では納得できる理由かと考えます。なお全体的に、一時延長をしてきた時と比べ、文書が「しっかり」しています。分かりやすく言えば、「官公庁慣れした人が書いた文章」っぽいです。バックに策士のブレーンが付いたのかもしれませんね。

Next Action

あとはコピー代を支払って取り寄せるだけですので、速やかに支払います。全文が届きましたら、こちらのブログでまた公開します。

またこれとは別に、前回書いた「第2の矢」は進めております。ただちょっと時間がかかりそうなので、これは相当先になるかもしれません。内容は書きませんし、聞かれても答えません。

さらにこれとは別に、「第3の矢」を用意しています。これはdiscloseの時期が難しいので、IT議論のSUGAI様と相談して決めます。(IT議論-「不正指令電磁的記録に関する罪」 各都道府県警への構成要件等の開示請求状況

また本日、CoinHive事件について横浜地検が控訴しました。これで私も覚悟を決めたので、「第4の矢」も用意することにしました。これも相当時間がかかりますが、成功すれば確実な効果をもたらせるので、やろうと思います。やはり内容は書きませんし、聞かれても答えません。ただしひとつ言うならば、私は「一匹狼」なのでずっと一人でやる予定でしたが、そのポリシーをこの第4の矢では捨てます。

今回言っておきたいこと:兵庫県警の現場の方を過剰に責めるのはやめましょう

「大事なことははじめに書け」と何度も教育されましたが、文章の構成上、後ろになってしまいました。A教授、すみません。

これまでと真逆のことを突然言うようですが、皆さん、兵庫県警の現場の方を過剰に責めるのはやめてください。意地悪をして「たたく」のもやめてください。それでは何も解決しません。

一番ダメな幕引きは、兵庫県警が今回の事件の担当者を懲戒し、「誤った判断をした捜査だった。担当者は処分した。」でオシマイにすることです。そして残念ながら、この幕引きとなる可能性が非常に高いと考えています。こうなってしまうと、繰り返しますが問題は何も解決しません。また数年経ったら、どこかの県警で同じ事件が発生し、叩かれ、担当が懲戒を受けます。それが永久に繰り返されます。

エラい人はいつでも責任を現場に押しつけ、そして貧乏クジを引くのはいつも現場の人間です。今回もそうなる可能性が高いため、それだけは無しだよと釘を刺しておかないといけません。組織の責任は組織が取らなくてはいけません。残念ながら、私にできることは、こうしてここでブログに記すだけですが……。

今回の冤罪事件(敢えて断言します)の原因は、多くの要因があると思います。いくつかは隠し球としてdiscloseしませんが、そのうちの一つは、間違いなく「曖昧すぎる法律の条文」です。

「不正指令電磁的記録に関する罪」は、この機会に条文の変更を前提として、きちんと国会・法務省で議論されるところまで持って行きたい。これが私の希望です。兵庫県警を叩くだけで解決する問題ではありません。ですから、そのレベルに到達するまで私は動きますし、現場を叩いて終わり、だけにすることは絶対にいけません。これはむしろ「現場のせいにして幕引き」にしたい人の思惑通りになってしまいます。

もし読んでいれば:兵庫県警の職員の方々へのメッセージ

素直に悪かったことは悪かった、と認めて欲しいです。今回の捜査は、強引すぎる点も多々見受けられます。突然の家宅捜索というのは、警察の皆さまが考えるよりも、ずっとずっと人の心を傷つけるのです。

しかし、あなた達はエラい人のスケープゴートになる可能性があります。自らの保身に注意してください。エラい人が決めたことの責任は、エラい人が取るのです。組織として行った行動の責任は、組織のトップが取るのです。

正しい職務規程に従い、正しい職務を行ったのならば、現場の人間に責任はありません。兵庫県警という組織に誤りがあったのならば、責任を取るのは兵庫県警のトップです。各都道府県警への指示に誤りがあったならば、責任を取るのは警察庁です。そして警察庁の指示に誤りがあったなら、その責任は国家公安委員会にあります。国の警察機構図はそのようになっています。

国家公安委員会

さて、進捗報告がこれだけで終わってしまってはつまらないので、ひとつTopicsを提供しておきましょう。本当は警察庁を取り上げたいのですが、そちらは隠し球がありすぎるので、今は触れるタイミングではありません。今回は国家公安委員会を俎上に挙げてみます。……と、その前に、皆さんは「警察のしくみ」をご存じでしょうか。念のため説明しましょう。

まず各都道府県警の上に、警察庁があります(警視庁は、東京都の警察組織であり、いわば「東京都警」です。間違えないでください)。警察庁のさらに上部組織が国家公安委員会です。国家公安委員会の上は、内閣総理大臣です。よく分からない方は、以下の「国の警察機構図」を印刷して壁に貼っておきましょう。

また、いわゆる「公安」と、国家公安委員会は別です。いわゆる「公安」は公安警察です。一方の国家公安委員会は行政委員会の一つであり、警察庁を管理するお役所です。お分かりいただけたでしょうか? まぁ、分からなくても置いていきます。

サイバー犯罪と国家公安委員会

さて、国家公安委員会の、サイバー犯罪への専門知識はどの程度のレベルなのでしょうか。何しろ攻殻機動隊がある組織ですから期待できそうです。(嘘です。草薙素子やバトーは公安警察であり、組織が違います。というか、あれはアニメとマンガの話なので現実と混同しちゃダメです)

その前に一点、注意しておきます。忘れないでください。CoinHive事件で検挙されたのはモロさんだけでなく、報道で見る限りでも全国10県警の一斉捜査によって最低16人が検挙されています(共同通信:違法マイニングで16人摘発)。報道されていない人もいるでしょうから、警察による日本最大の大量冤罪検挙事案として、歴史に残る可能性もあります。

さて国家公安委員会では、このCoinHive事件による大量冤罪検挙事案について、一斉検挙があった直後の平成30年6月中旬にどう評価されていたのでしょうか。それは以下の定例委員会の議事を見ればお分かりになると思います。

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引用元:国家公安委員会「定例委員会の開催状況」平成30年6月14日(木)

(5)仮想通貨の不正採掘に係る犯罪の一斉集中取締りの実施について

サイバーセキュリティ・情報化審議官から、仮想通貨を不正に採掘させるプログラムを利用した不正指令電磁的記録供用等事件について、宮城県警察等10県警察が6月13日までに一斉集中取締りを実施した旨の報告があった。

北島委員より、「各県警察の活動を高く評価したい」旨の発言があった。

川本委員より、「サイト上の広告と同様だという報道もあるが、このプログラムを利用した不正採掘は明らかに犯罪だと思う」旨の発言があった。

安藤委員より、「広告と仕組みが同じでどこが問題なのかと主張する人がいるとすれば、その違いが分かるように、閲覧者の認識、選択肢、パソコン端末への支障、社会的相当性等の点につき比較して丁寧に説明することで理解が得られるので、更に工夫していただきたい」旨、小田委員より、「県警察による良い検挙事例であることのみならず、このような目に見えない犯罪への注意喚起という面からも、一般の方にも分かるように丁寧に広報をしていただきたい」旨の発言があった。

気持ち悪いほど全員が絶賛です。自分たちは警察法第五条および第十七条にのっとり、警察庁を管理・統轄する立場である、ということをそもそも理解しているのでしょうか。念のため、警察法を以下に引用します。

警察法

第五条 国家公安委員会は、国の公安に係る警察運営をつかさどり、警察教養、警察通信、情報技術の解析、犯罪鑑識、犯罪統計及び警察装備に関する事項を統轄し、並びに警察行政に関する調整を行うことにより、個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持することを任務とする。

第十七条 警察庁は、国家公安委員会の管理の下に、第五条第四項各号に掲げる事務をつかさどり、並びに同条第五項及び第六項に規定する事務について国家公安委員会を補佐する。

せめて一人くらいは、慎重論を唱える人がいて欲しかったというのが私の素直な感想です。

特に川本委員の「明らかに犯罪だと思う」という発言は最高にアツくてロックですね。これにはクラウザー様もびっくりです。国家公安委員会の定例会議では、専門知識を駆使して刑法の解釈を論じるのでは無く、「自分が犯罪だと思うかどうか」という主観が優先されるのです。私は「日本は法治国家だ」と中学校で習いましたし、そう思っていましたが、どうやら違ったようです。

なお、これら委員のJavaScriptのスキルはどのくらいか、近年のマルチコアCPUはどのように動作しているのか知っているか、チューリング機械の停止性問題を説明できるか、刑法・刑事訴訟法の専門教育を受けているか、そしてそもそもサイバー犯罪に対して意見できるだけの専門知識・経験があるのか、全て謎です。

国家公安委員会警察庁の上部組織であり、警察事務を行う警察庁への管理責任を持つ立場です。その日本の警察を統べるトップ組織は、こんなノリです。残念ながらこれが現実です。こんな中、モロさんは冤罪で検挙され、さらには無罪判決を受けながら検察により控訴されました。

私が矛を向けるべき先が多すぎるので、これからの活動もかなりゆるやかになると思います。でもやめることはありませんので、生暖かく見守って頂けますと幸いです。そしてぜひ皆さん、モロさんへの援助をお願いします。これを放置していると、次に逮捕されるのはあなたかもしれないのです。

【付記】淡路島の帰属について

前の記事で私が四国出身であることと、「淡路島は徳島県に所属する」と書きました。これに対し、大量の「いや、兵庫県のものだ」という意見と、1つの「いや、上沼恵美子のものだ」という意見を頂きました。

このためこれらを踏まえ、次のように謹んで訂正いたします。

「淡路島は、兵庫県では無く徳島県固有の領土ですが、現在、上沼恵美子氏に実効支配されています」

(つづく)