(その2)「不正指令電磁的記録に関する罪」について、最高裁判所へ情報公開請求をしました

不正指令電磁的記録に関する罪(刑法168条の2および3)について、前回の記事では、最高裁判所へ情報公開請求をしました。具体的な請求は、以下の項目です。

  1. 令状審査に関する統計
     平成23年度から平成30年度までの期間における,刑法168条の2及び168条の3の罪に関する令状(逮捕状,勾留状及び捜索,差押,検証許可状)の請求数及び審査結果が記載された文書。
  2. 刑事裁判官のIT研修
     平成23年度から平成30年度までの期間において、刑事事件を担当する裁判官を対象として実施された,情報技術(IT)についての研修に関する以下の文書。
     (1)研修の表題,実施期間並びに外部講師を招聘した場合にはその講師名及び所属が記載されたもの。
     (2)各研修において裁判官に提示または配布された資料。

なお、これまでの動きを追いたい方は、Twitterのmomentにまとめてあるので追ってください。ブクマ推奨。

今回の概要 - 最高裁判所への情報公開請求は、さらに延長を喰らいました

前回、情報公開請求に「3ヶ月延長」という焦らしプレイを喰らいました。今回再び通知があり、さらに1ヶ月の延長を喰らいました。

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1ヶ月の延期通知

なお、これは「情報を公開するのに整理するからもう1ヶ月待ってちょ」ではなく、「開示/非開示の判断も含めて延長」であることに注意してください。ここまで待って「非開示」もあり得ます。

しかし、厳しい。統計データは、今さら私が言うまでも無く国家の根幹です。これからはデータの時代であり、このようなものはサクっと出てこないと困ります。しかしまぁ、おとなしく1ヶ月待つことにします。

さて、これだけで終わってもつまらないので、私が今後予定している活動を少し書いておきましょう。

2020年度のサイバーセキュリティ月間と、兵庫県警サイバー犯罪対策課

今回の無限アラート事件について、以下のねとらぼの記事が物議を醸しました。

今回、私が検挙された際、兵庫県警の刑事から「被害者は0人だが、サイバー月間だから摘発した」「あなただけを攻撃したわけではない」というような説明がありましたが、(以下略)

ここで「サイバー月間」とは、毎年政府主導で行っている「サイバーセキュリティ月間」のことです。

兵庫県警の冤罪検挙と、不起訴処分の意味するところ

さて、上記の記事に出てきた「サイバー月間だから摘発した」論理は非常に危険です。来年のサイバーセキュリティ月間(2020年の2月から3月です)に、兵庫県警はまた冤罪検挙を行う可能性が非常に高いのです。

今回、無限アラート事件の冤罪検挙に遭った方々は不起訴処分となりました。不起訴理由は「嫌疑なし」ではなく、「起訴猶予処分」です。これは裏を返せば、「無限アラート事件は犯罪であった = 犯罪の構成要件を満たしていた」と宣言されてしまったことになります。(この件については、横浜パーク法律事務所より声明文が出ているのでそちらをご覧ください:アラートループ事件の被疑者2名に対する起訴猶予処分を受けて

そのため、兵庫県警は今後も、同様の無限アラートを検挙し続けます。なぜなら、それは犯罪であるという前例が既に出来てしまったためです。特にサイバーセキュリティ月間は「点数稼ぎ」の期間であり、とりわけ注意しなくてはいけません。今年もまた、兵庫県警サイバー犯罪対策課による冤罪検挙が発生します。

われわれ一般市民は、このような国家権力の暴力行為を、なんとしても監視し阻止しなくてはなりません。そして私はセキュリティのプロフェッショナルとして、このような不正義を行っている兵庫県警サイバー犯罪対策課に何かしらActionを起こす義務もあります。見て見ぬふりはできません。

兵庫県警による冤罪検挙への、注意喚起を行います

というわけで、来年のサイバーセキュリティ月間に向けて、「サイバーセキュリティ月間において、兵庫県警による冤罪検挙に気をつけましょう」という注意喚起を行う予定です。

  1. 無限アラート事件と、兵庫県警サイバー犯罪対策課の再紹介
  2. 「不正指令電磁的記録に関する罪」と法律の危うさ
  3. 情報開示請求で得られた警察庁の通達
  4. 冤罪検挙から身を守る方法

これらのキャンペーンサイトを作り、一人でも冤罪被害者を減らす活動を行います。

特に4.については、日本ハッカー協会主催で行われたセミナー「Coinhive事件に学ぶ、エンジニアが刑事事件で身を守る方法」の内容をエンジニアの方はぜひ知っておいて頂きたいです。次に検挙されるのは、あなたかもしれないのです。

デザイナーさんの募集

上記Webサイトは、Webデザイナーさんに発注して作成したいと考えています。今回の無限アラート事件に関する興味があり、仕事を受けて頂けるデザイナーさん、いらっしゃればご連絡ください。もちろん正規の代金をお支払いします。

ペラ1のページがだいたい5つ程度の簡単なもので、問い合わせフォームなども設けないので、プログラミング周りの知識は薄くて良いです。原稿は私が書きますので、全体のデザイン・ロゴや文章の流し込みなど、デザイン部分だけ注力して頂ければ十分です。

詳細のヒアリングなど、コンタクトは以下へお願いします。

ゆっくりと進みます

当初の予想通り、無限アラート事件は相当な長期戦になりつつあります。もう私が活動をやめてしまった、という声も時々聞きました。また、兵庫県警サイバー犯罪対策課を責めることが日本のサイバーセキュリティ向上につながるのか? と何度も言われました。しかし私は、兵庫県警が「あの検挙は誤りであった」と正式に認めて謝罪しない限り、やめることはありません。いつまでも騒ぎ続け、いつまでも兵庫県警の責を問い続けます。

これは一つには、兵庫県警による冤罪検挙の被害者のためでもあります。誤った判断と行動で冤罪被害者の人生を潰しておきながら、その過ちを認めない兵庫県警を許すことはできません。

また他方で、本件は、これを放置すると「JavaScriptの無限ループによるポップアップは犯罪である」という前例が残り続けてしまう非常に危険な案件だからです。ひいては「見たことないプログラム、目新しいプログラム……それらはまず犯罪として逮捕する」という、日本のIT技術の推進を大きく遅らせる原因となります。新規性のあるプログラム、画期的なサービス、それらはまず犯罪として処理する。そんなディストピアになりかねません。兵庫県警サイバー犯罪対策課は、日本経済およびIT産業へ大きな悪影響を与えているのです。

なお最後に、これは兵庫県警の組織の問題です。以前にも書きましたが、現場の警察官の方を叩くのはやめてください。それでは問題は解決しません。兵庫県警が組織として無限アラート事件を問題と捉え、そして組織として解決しないといけません。トカゲの尻尾切りで終わらせる未来は私も望んでいません。

いつもの